走れ!ベビーカー!

僕は2016年12月より、ワーキングホリデーの制度を利用してオーストラリアに住んでいる。

先日、現在滞在中のサンシャインコーストにてマラソン大会に出場することになった。
その名はSUNSHINE COAST MARATHON 2017。

フルマラソン(42.195Km)、ハーフマラソン(21.0975Km)に加えて、10Km、5Km、2Kmとエントリー項目が多い。

僕のマラソン経歴はといえば、沖縄の石垣島マラソンを2014年から3年間、10Km、ハーフ、フルと、毎年少しずつ距離を伸ばしながら参加した程度。
特にタイムを気にしながら走れるような、”ランナー”と呼ぶにはほど遠い、どちらかといえば”ジョガー(ジョギング)”な僕。
これまでの結果は、10Km(1時間)、ハーフ(3時間30分)、フル(6時間越えで40Km地点にてタイムアップ)という無残な走りっぷり。

そんな僕が海外初参加のマラソン大会なのである。

僕は走ることが好きだ。
普段は住んでいる場所の近くにあるビーチまで歩き、素足になる。
ヨガを少しして身体をほぐしたら、2~3Km程度の距離を、週に数回のペースで走っている。

「走ると無心になれる」などとはよく言うものだが、欲にまみれた僕のような凡人の頭の中は、「今日あった嫌なこと」とか「これからどうしていこう」といった、どちらかというと不安や恐怖のほうが常にいっぱいである。

堀江貴文さんにしかり、高城剛さんにしかり、僕が憧れている人物によると、
「不安や恐怖というのは考えるだけ無駄である。自分を恐れることほど愚かなことはない。」
というようなことを著書で述べていることを何度か読んだ。

たしかにそうなのである。
例えば「こんなことをしても失敗するのではないか」「どうせうまくいくはずがない」と、どこかで脳みそが条件反射のように、不安や恐怖を機械のように製造しては、せっせと脳裏に運んでくる。

こんなこと考えても無駄だし、ネガティブに考えるよりはポジティブに考えたほうが良い。
頭ではそれをしっかりとわかっているつもりでも、どうしても脳みそがそうさせてくれない。
そんなことはあなたにもないだろうか。

瞑想の本では「人間の考えることの9割は昨日と同じことで、そのうち8割はネガティブなことである」とまで言われている。

もともとは、古来、人間が狩りをして生きていた頃からの生存本能がそうしているだけであって、今の時代、テロや凶悪な事件などが増えているかもしれないが、普段の我々はそこまで不安や恐怖におびえる必要はないはずだ。

そのことを理解した上で、いかに脳みそを納得させるのか、その手段の1つが瞑想であり、先ほど話したジョギングなのである。

頭が納得しないのなら、身体を動かして汗をかいてスッキリしましょうぜ!ということだ。

最近では、心と身体は連動している、1つである、ということの他にも腸のコンディションをいかに整えるかというのが、話題になってきているが、それもわかるような気がする。

たしかに、ハングリージャックスで肉汁あふれるハンバーガーにコーラとポテトを食べたあとと、玄米に味噌汁を食べたあとでは、思考が違ってくるような気もする。
それでもたまにはフィッシュアンドチップスを食べたい。というのが本音だが。

話がだいぶそれたので、本筋に戻ると、頭で考えすぎる、つまり暴走する脳みそをとめるために僕は走っている、ということになる。

もちろん日の出や日没時に太陽の光を浴びながら、波の音を聞きながら、人々を観察しながら走るのが単純に気持ちいい、というのもあるのだが、身体を動かすことによって精神のコントロールをしている、という表現が正しいように思う。

走っている最中は、呼吸は一定になるので、まるで瞑想をしているときのように、いろんな考えがあれやこれやと浮かんでくる。
流れる雲のようにうかんでくる考えから、目の前の走ることに意識を”再集中”させることで、まさに「いまここ」に心がある状態をつくりだす。

それがなんとも心地よい。トレーニングのように身体に負荷をかけて痛めつけるわけでもないので、身体も心も気持ち良い。
スッキリする。すがすがしい。どんな表現がぴったりくるかわからないが、そんな感じだ。
おそらく、幸せ物質のセロトニンがでているだろうと思い込みながら今日も僕は走る。

またまた話がそれていたので、今度こそ本筋に戻ろう。

今回僕が5Kmにエントリーしたのは、彼女と一緒に走れる距離ということで、内心は10Kmくらいが「気持ちよくて達成感もありもうちょっと走りたい、という状態でおわれて楽しそうだ」と思っていた。

マラソンに関して特に練習を日々積み重ねてきたわけでもなかったので、実際は走り終わった後に「このくらいでよかったかな」という感じ。

今回参加した大会は、エントリーするタイミングと距離によって金額が違う。
2Kmだと20$~30$(2000~3000円) 、参加した5Kmだと40$~55$(4000~5500円)、フルマラソンにもなると、参加費だけで110~135$(11,000~13,500円)ほどになる。

コースも会場近くに6か月住んでいるだけあって、見慣れた景色だし、距離と値段を考えると、妥当な5Kmということになった。

ちなみにフル、ハーフ、10Kmは上位入賞者に賞金がでる。
すべてのコースに共通するのは、完走後のメダルといったところか。

サンシャインコーストについて少しだけ。
人口は30万人ほど、面積は四国の香川県ほど。
人口でいえば沖縄県那覇市、福岡県久留米市、東京なら新宿区あたりを想像してもらえると同程度。

都市部と田舎の中間のような街とでもいえばいいだろうか。

そんな場所で開催されるマラソン大会。

僕は石垣島での参加経験しかないため、人口5万人で年間100万人観光客が訪れる南の離島で行われたマラソン大会とついつい比較しながら走ってしまった。

8月のオーストラリアは冬真っ只中であり、石垣島のマラソン大会が開催される1月も冬。
やはり夏は暑すぎるし、日中は気温が上がりすぎてランナーにとっても応援者にとってもつらい、というのがどちらの大会の主催者たちの本音ではなかろうか。

違う点はというと、オーストラリアの人(オセアニア人)は極めて早起きであり、朝の4時や5時過ぎでも、ランニングや犬の散歩、サーフィンなどをしていて、国民全体がアクティブである。

コンビニエンスストアのような感覚でプロテイン専門店やジムがあるし(むしろコンビニが少なく感じる)、広い公園や運動器具、車道と自転車道と歩道がしっかり整備されていることなど、身体を動かすことが好きな人にとっては非常に過ごしやすい国だと感じる。

早起きする理由としては、紫外線が日本と比べても数倍強いことなどから、「日中仕事して皮膚ガンになるくらいなら、朝早くから働いて昼過ぎには帰ろう」そんな考えも少なからずありそうだ。

石垣島で3年間過ごした僕でも実感する、日差しの強さ。

「暑い」ではない。「痛い」のである。

日焼け止めなんて日本ではほとんどつけたことがなかった僕も、オーストラリアではさすがに肌を心配するようになり、日焼け対策をするまでになった。

それらの理由もあってか、大会のスタート時間は5時。6時にはフルとハーフの走者がスタートする。
5kmの僕らにいたっては10時過ぎのスタート。
交通規制の関係もあってか、大会も13時には終わり、希望者には近くのサーフスクール兼レストランバーでアフターパーティがある。

住んでいるものとしては、走ってみて景色が変わるなど特に新しい感動もなく、正直、走っている距離を少し伸ばした程度だった。

走り終わったら石垣牛ならぬオージービーフが待っているわけでもなく、石垣島マラソンの出店店舗の多さは素晴らしい!と、結局マラソンより食が目的の1つであったことにも気づかされた。

会場には10個ほど、みたことある店舗だったり初見のハンバーガー、フルーツジュース、揚げ物屋など、あんまりそそられない屋台ばかりで、結局何も食べなかった。

それよりも走った後に並んでいるスイカやバナナ、オレンジなど果物が美味しくて何個も食べてしまい、少しお腹がふくれたのもあるが。

石垣牛のBBQ、カレーにうどん、豚汁、焼きそばに焼き鳥・・・やはり日本の食文化は素晴らしいということだ。

もう1つ、日本のほうがコスプレ文化のせいか、走っていて他のランナーを観察するのがあんなに楽しいマラソン大会はないのではないかと思った。

日本人にとっては、イベントは一種の”祭り”であって、それは日頃抑えている自分を解放する機会のように捉えている、だからコスプレが多かったり、”一体感”を求めて参加する、”走る”以外のマラソンの側面もありそうだ。

こちらはというと、中にはバットマンがいたりしたけれども、そんなもんで、それくらいオーストラリア人は”普通”にみえた。

では、オーストラリアならではと感じたよいところはどこだろう。

それは圧倒的な自由さだ。

5kmコースをスタートした瞬間からいろんなことに驚いた。

まずはキックボードに乗った少女がゼッケンをつけて走っていたことだ。
日本人なら思わず「え?それありなの?」と思うことだろう。
ちなみに誰も止める人はいない。

そして、なによりもビックリしたのが、ベビーカーを押して走るママさんやパパさんランナーだ。

「ガラガラガラ!」「ゴロゴロゴロ!」とあのベビーカーのホイールが高速でまわる音とともに、さっそうとかけぬけていくお母さんやお父さん。

ベビーカーには人形ではなく、もちろん赤ちゃんがちょこんと座っている。
もしかしたら寝ている子だっていたかもしれない。
それが一人だけではない、何人も見た。
中には双子のベビーカーを押して僕らの何倍も早く走る人だっていた。

走り終わった後に、いったいどんな人たちが走るのだろう?
とゴール近くでしばらくみていて,5kmや2kmのコースが設立されている理由を知る。

走っているほとんどは家族である。
フルやハーフ、10Kmでベビーカーやキックボードが走っていたら、さすがに「おいおい」となるが、5kmや2kmは別。

これは日本なら間違い無く「走る前に厳重注意」というより「禁止」だろう。

ゴール前では、「Good Job!!」「Well done!!」「GoGoGOGO!」

と応援の声が絶えず、聞いているだけできもちがよい。

オーストラリアの人々がいかにプライベートを大切にしているか、様々な移民を受け入れている多民族国家ならではの自由を感じた。

さらには、参加費のほとんどはチャリティーにまわされるそうで、参加者それぞれが基金を選び、参加費用をとおして寄付することができる。
もちろん「寄付しない」ことも可能であり、そこには強制感などはない。

少し期待しすぎたことといえば、グッズ関連。
例えば日本のマラソン大会の場合は、参加費用にTシャツなどグッズの制作費も含まれており、僕もサンシャインコーストマラソンTシャツがもらえるのではないかと楽しみにしていた。

が、実際は違い、ゼッケンと一緒にもらったのは”ウォーターボトル”。
デザインはコース別にわかれているようだが、「2017」のような刻印などはない。
「1人1つですよ。必要ですか?」と、もらってももらわなくてもいいような言い方をされたことから、毎年リサイクルしているような印象もうけた。

走り終わればメダルがもらえて、フルとハーフはオリジナルタオルも。
その他サンバイザー(なぜか人気)や欲しかったTシャツなどは有料販売だった。

6か月も住んでいるだけに、あんまり乗り気ではなかったが、参加してみると初の海外マラソン大会だけあって、おもしろい発見がたくさんあった。

そして、なによりもオーストラリア人は人生を楽しむことが僕ら日本人よりも格段に上手なようにみえた。

ただいま8月。

もうすぐオーストラリアにも春がくる。

当ブログの記事をご覧いただきありがとうございます。また遊びに来てください^^